残像に口紅を

2006年4月28日 読書
残像に口紅を
筒井康隆

「あ」が使えなくなると、「愛」も「あなた」も消えてしまった。世界からひとつ、またひとつと、ことばが消えてゆく。言語が消滅するなかで、執筆し、飲食し、講演し、交情する小説家を描いた究極の実験的長篇小説。

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おそらく日本文学史上最も実験的な小説。
世界からことばが消えていく、
それと同時にそのことばを含むあらゆる物・概念も消えていく
という内容。
世界からことばが消えていくのにはちゃんとした理由・目的があり、
冒頭で主人公がその目的についてぐだぐだ喋っているんですが、
それはこの著者の『文学部唯野教授』を2,3回じっくり読まないと多分わかんないと思う。
(特に記号論とポスト構造主義の講義のところ)
まあ、そんな小難しいことはわかんなくても楽しめます。
まず、この設定が斬新で面白いですし、
文章も筒井康隆らしい軽薄でエンタテイメント性の高いものとなってるんで、
ふつーに読んでて楽しかった。

最後に、なんといってもこの小説の良さは
「ことば」それ自体の大切さを認識できること。
大切なことは失ってはじめてわかる
という使い古された表現がありますが、
もしそれが正しいとするならば、
唯一この小説だけが「ことば」の大切さを伝えることができると思います。

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