蹴りたい背中

2004年11月15日 読書
綿矢 りさ 河出書房新社 2003/08/26 ¥1,050
『インストール』で文藝賞を受賞した綿矢りさの受賞後第1作となる『蹴りたい背中』は、前作同様、思春期の女の子が日常の中で感受する「世界」への違和感を、主人公の内面に沿った一人称の視点で描き出した高校生小説である。長谷川初実(ハツ)は、陸上部に所属する高校1年生。気の合う者同士でグループを作りお互いに馴染もうとする…

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綿矢りさがこの作品で史上最年少の芥川賞を受賞したとき、
同時受賞の人が金原ひとみで、
若くてきれいな女性が権威ある文学賞を受賞!!
というふうに、作品自体よりも話題性だけが一人歩きしてて
「なんだかな」という感じでした。
筒井康隆が「文壇をモーニング娘。にしてどうする!?」
と喝を入れてましたかが、いや〜まさにその通りだよ。

ところが、ところがですよ。
この「蹴りたい背中」はそんな懸念を一掃してくれる
傑作だったんですよっ!

作品の大半は「学校」での日常に費やされています。
その描写が痛いほど正確でして、
綿矢りさの観察力と表現力には脱帽しました。
これほど正確に、高校生にとっての「学校」という空間を
表現できた作家は綿矢りさただ一人だけですね。

どんな学園ドラマでも決して語られることのない、
高校生の大半が(意識的にしろ無意識的にしろ)感じている
「学校」の真実の姿がここにあります。
現役の高校生2年生が言っているから間違いありません。

とにかく、この描写がすごい。
「よく言ってくれた」と手放しで賞賛したい。
あまりに正確すぎるんで、爽快感すら覚えました。

結局何が言いたいのか分からない、とレビューする方もいますが、
別に何かを主張したいわけではないと思います。
この小説の売りは、描写です。
本当に精度の高い描写は、それだけで十分、小説を成立させえます。
こういうのはエンダにとっても初体験でして、とても新鮮でした。

10代の人には激しくオススメ。

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